残り19周回目には追走集団ができ、そこには武山が入る。今季のレースは、こうした重要な動きにはチームの誰かが入っていのが、今年の強さの象徴だ。追走は協調が取れず先頭に追いつけなかったが、ディラン・ホプキンス選手(ROOJAI INSURANCE)のみが前に合流して、先頭は8名となった。
メイン集団はかなり落ち着き、残り13周回目には前と1分近くの差がついて、8名の逃げ切りが濃厚となってきた。逃げ集団も自分たちだけでレースが決まりそうなことを察し、残り9周回あたりから協調が乱れ、アタックを仕掛ける選手が出てきた。岡は常に3番手あたりをキープし、冷静に動きを見る。特に2名いるヴィクトワール広島は波状攻撃を仕掛けてくる。そんな中、先週のルアンダでの世界選手権を走ってから来日したばかりのタラマエ選手がアタック。これには岡も反応。残り8周回、7周回を岡とタラマエ選手の2人で先行し、6周回目に入る。後ろの6名は単独で追走して脚を使ったり、エナジー切れで遅れ始めたりがあって、2名の先行が決まりかけたそのとき、岡とタラマエ選手にスローダウンの指示が審判より入る。「マイナースプリント」というルールが適用されたためだった。これは極めてめずらしいルール適用であったが、要するに今回、集団が落ち着きすぎてしまい、岡たち8名が集団に追いつきそうになり、一度8名の逃げを止めて、集団のみで3周回のレースをして9位以降の順位決定レースをし、それを終えた集団がコース外に出てから、改めて8名のみで6周回のレースをするということに。タラマエ選手と2人で抜け出せそうな展開でのレース中断で、岡も審判に説明を求める動きをしたが、そこはルール。集団がレースをしている間も、8名は流しながら周回を走っていたため、8名は完全に回復し、6周だけのレースとしてリスタートとなってしまった。
8名だけの決戦レースが再開すると、それまでのレースとはまったく違うレースとなる。集団が追いつく恐れがないので、8名は最後のスプリントに向けて最初から牽制が始まる。お互いが様子をうかがい、落ち着きがない。ただ、スプリントが苦手な選手も多かったので、徐々にアタック合戦が始まる。特に2名いるヴィクトワール広島は再び波状攻撃をしかけ、岡は常にそれに反応。残り5周でシュルツ選手が行き、残り4周でダイボール選手が行き、残り3周で再びダイボール選手が行くという状況であったが、岡はひどく離されないうちに反応して、自らアタックを追った。特に残り3周回目のダイボール選手とのランデブーは、あと少しで決まりかけたが、最終周回に入る直前に捕まり、結局8名でのスプリント勝負に。
そして最終周。最終コーナーのある残り300mでダイボール選手がアタック。スプリント力に欠けるダイボール選手が逃げ切りたいのは明確で、岡はすぐに反応。そして残り200mには自らスプリントを仕掛け、ダイボール選手を交わして独走体制に。実況解説にも「100点満点」と言わしめるほど、自分ですべて捌いて、仕掛けて、勝利して、完璧な優勝を遂げた。岡は「8名の中で自分が一番スプリント力があるのがわかっていたので、早めに仕掛けてみたらうまく決まった」とレース後に語った。途中マイナースプリントルールの適用で、状況的には岡に不利に働くルールかと懸念もあったが、当の本人は「どっちにしても自分にチャンスがある」と思っていたよう。残り22周回目でこのメンバーの逃げを決めたときから、岡の優勝は約束されていたのかもしれない。岡はスプリント賞とアジア最優秀選手賞も獲得し、表彰台を何度もにぎわせた。
明日も引き続き大分で国際ロードレースが開催される。宇都宮ブリッツェンの快進撃を期待したい。