その3周回目の最後に7名の逃げができる。そこに沢田時、岡篤志、ルーベン・アコスタの3名が入り、他にLeonel Quintero選手、Elliot Schultz選手(以上ヴィクトワール広島)、入部正太朗選手(シマノレーシング)、佐藤光選手(TeamCyclersSNEL)も乗った。最大40秒ほどの差を集団とつけながら、7名は8周回に入る手前で捕まるが、宇都宮ブリッツェンとしては少し人数が多すぎたし、フィニッシュがわずかに上ったレイアウトになるため、集団スプリントになったときに勝機がある3名が逃げに入ってしまい、このままでは攻撃のパターンに幅を持たせられないため、あまりいい展開ではなかった。
この7名が捕まったことが、結果的に正解だったと言わせてくれたのが、沢田の逃げだった。9周回目でElliot Schultz選手(ヴィクトワール広島)と2人で集団から飛び出した。先の7名の逃げに入っていた沢田が、集団で1周休んだだけで再び逃げに乗ったのだ。
先週、今日と同じ兵庫県で行なわれたマウンテンバイクのレース「菖蒲谷XCO」で優勝を飾った沢田。その際は雨による泥でジャージが判別できなくなるほどで、沢田に「人生で一番きついレースだった」と言わしめた、まさにサバイバルなレースをこなしたばかり。宇都宮に帰り「ロードバイクは軽い! 進む!」と、その差を楽しんでいたのを思い出すと、沢田にとっては今日は大変快適な状況でのレースだったのかもしれない。
沢田とSchultz選手のランデブーは最大で1分50秒のタイムギャップを生んだ。後ろでは宇都宮ブリッツェンの残る5名がしっかりと集団に蓋をし、アタックを細かく潰していく。また、8名で出場していたヴィクトワール広島も集団コントロールに加勢したため、差が縮まらない。Jプロツアーのリーダージャージを保有していたマトリックスパワータグが集団牽引する姿も見せたが、オーストラリア選手権4位の実力者Schultz選手の強力な逃げには叶わず。沢田もSchultz選手のその強さは並走しながら感じていたようだ。
ラスト周回。沢田にとっては、集団を待って岡かアコスタの集団スプリントに持ち込む考えも持っていたが、逃げ切りが濃厚となり、ここで牽制をして表彰台を逃してはならないと、売り切れそうな脚にムチを打って最終周の7.2kmに賭けた。タイム差は33秒に縮んでいたが、残り5kmで30秒差だったのを、残り3kmでは35秒差に広げた。口を開けて苦しそうにしながらSchultz選手に食らいつくが、最後の上りの頂上手前でとうとう引き離されてしまった。大健闘だ。ただ、沢田自身の頑張りもすごいが、集団をコントロールした他のチームメイトも素晴らしい働きをしたことにも注目したい。1周目からの武山、花田のチェックに始まり、3~7周回目の7人の逃げには沢田時、岡篤志、ルーベン・アコスタが入り、実は8周回目にできた逃げに谷が乗っており、それはすぐに捕まったが、9周回目で沢田の逃げが成功し、その後は全員で集団をコントロールした。今日のレースは宇都宮ブリッツェンがいいレースを組んだと言ってもいいだろう。
優勝はSchultz選手となり、沢田は引き離されたまま、わずか2秒差で2位。今季は早くもロードレースでの表彰台を獲得した。鈴木真理監督率いる宇都宮ブリッツェンが、全員で掴んだ2位だった。沢田は来週開催されるマウンテンバイクのアジア選手権で2連覇を狙い、そのために明日出国する。沢田時の勢いは止まりそうにない。