1.3kmのパレード走行後、最初に動いたのはJCLチーム右京勢。鎌田晃輝選手が山岳賞トップのため、そのジャージをキープするための動きだ。山岳ポイントは総合タイムに関係するタイムボーナスがないので、宇都宮ブリッツェンとしては集団待機。しかし重要なのは周回の後半に出てくるスプリントポイントだ。通過順位3位まで、上位から3秒、2秒、1秒が総合タイムからマイナスされる。最初の山岳ポイントを超えた下りで、総合順位に絡んできそうな5名の選手が逃げ、それに乗りたい岡が単騎で追うが、ようやく追いついたところで程なく集団もジョインしてしまった。
その後2名の逃げができて2周目に入るが、総合3位につけているベンジャミ・プラデス(VC福岡)が猛追し2名を捕まえる。そこに反応したのは武山だ。しばらく5名で逃げる時間があったが、新城幸也選手(ソリューション・テック・ヴィーニ・ファンティーニ)が集団をひとりで牽引し、武山たち5名を飲み込んだ。そしてまたすぐにプラデス選手が仕掛け、今度は沢田がチェックに入り再び5名の逃げに。集団はすぐ後ろに迫っており、沢田は下がったが、3周目に入るときには残った今村駿介選手(ワンティ・NIPPO・リユーズ)、山本元喜選手(キナンレーシングチーム)、新開隆人選手(ヴェロリアン松山)の3名の逃げになる。
2周目から降り始めた小雨は大粒の雨に変わり、路面を完全に濡らしていた。逃げと集団の差は3周目に入る時点で1分37秒。山岳ポイントからの下りで新開選手が遅れ、8の字の北側部分、つまり山岳地帯を終えたときに集団との差は31秒に。さらに残り15km地点で山本選手がドロップして、とうとう今村選手単独の逃げと集団の戦いとなった。
リーダージャージを擁するソリューション・テック・ヴィーニ・ファンティーニが集団をコントロールする中、宇都宮ブリッツェンも最終局面に備えて集団前方に固まる。そんな集団内が緊迫し始めた状況で、なんと多くの選手を巻き込む大落車が発生。選手によっては自転車ごと崖に落ちている姿も見受けられ、特にヴィクトワール広島の選手たちが多く巻き込まれたようだ。宇都宮ブリッツェンも何名かは完全にストップさせられたが、落車することはなく、全員で集団復帰。そんなアクシデントもあってか、今村選手との差を縮めることに苦しむ集団。雨が激しさを増す中、力強くペダルを踏む今村選手が、逃げ切りステージ優勝を成し遂げた。これには多くの選手が「脱帽」という言葉で今村選手を称賛した。宇都宮ブリッツェンはアコスタが12位、岡が13位だったが、全員がトップとタイム差10秒の集団に入ることができた。
ステージ2位はリーダージャージのドゥシャン・ラヨヴィッチ選手でタイムボーナス6秒を稼ぎ総合も2位に。今村選手はラヨヴィッチ選手から総合で13秒遅れであったが、集団と10秒のタイム差をつけた上に、タイムボーナス10秒がついたので総合トップに躍り出た。やはりこのツール・ド・熊野はタイムボーナスが影響する。岡はタイム差10秒の集団でゴールできたこと、それはラヨヴィッチ選手とタイム差なしであったことが重要で、本人はスプリント勝負に絡めなかったことを悔いていたが、結局は総合3位となり、表彰台圏内に留まることができた。明日は厳しい山岳コースのため、トラックを中心に戦う今村選手の脚質には合わないステージ。岡が今以上のリザルトを得ることに、望みをつなぐ第2ステージとなった。
なお、トップとタイム差10秒の2位集団には34名がいたが、チーム全員をそこに入れたのは宇都宮ブリッツェンだけであった。底力をみせた走りのかいあって、チーム総合順位は2位に。1位は今村選手のワンティ・NIPPO・リユーズだが、差は10秒なのでチーム総合優勝の可能性も出てきた。個人も総合も、明日のクイーンステージの結果にかかる。